人はどのような時に高いパフォーマンスを出すのか?
以下の2つの状態の時、人は高いパフォーマンスを出すことが多いでしょう。
・モチベーションが非常に高く、楽しいと感じている状態
・周囲から強いプレッシャーを受け、お尻に火が付いている状態
これらの2つは、人を大きく成長させる上で重要な精神状態であり、どちらも人を成長させる良い機会となります。なお、持続的な成長を達成するにはどちらも経験しなければなりません。しかし、持続的な成長には、後者の強いプレッシャーを受けている状態よりも前者の高いモチベーション状態の方がより重要です。強いプレッシャーを受ける中で普通以上のパフォーマンスを出すこと自体がとてつもない忍耐力が必要であり、時には精神的なダメージが大き過ぎて精神病になることがあります。継続的な成長を促す精神状態とは、通常は高いモチベーション状態が続き、時に強いプレッシャーを受けることが理想と考えられます。
しかし、高いモチベーション状態を作りだすことは、強いプレッシャーを受けている状態を作りだすことよりも何倍も難しいのです。本テーマでは、持続的な成長において、特に重要である高いモチベーションの維持による成長について検討・考察していきます。
従業員個人のモチベーションを上げる方法
従業員個人のモチベーションに影響を与えるものは、個人に与えられた裁量や責任、自由度、相対的な公平感などがあります。一方で、会社の体制が与える従業員個人のモチベーションへの影響については、限定的と考えられます。それは、入社する際に会社のルールを容認しており、また、会社全体で決められたルールは、従業員全体が公平に守らなければならないので割と公平感が保たれているからです。
では、従業員個人のモチベーションに特に影響を与えるのは何でしょうか?それは、直属の上司です。上司次第で部下のモチベーションや成長率が決まるといっても過言ではありません。上司が従業員個人(部下)のモチベーションを上げるには、以下の環境を作ることです。
①仕事を通して成長を感じさせること
②上司はギリギリまで部下を見守ること
③顧客に対する非公式な仕事(お手伝い等)を認めること
④個人の責任の範囲を明確にすること
⑤顧客が結果を判断する環境を作ること
⑥自分たちの仕事が重要であると認識させること
仕事を通して成長を感じさせること
仕事を通して成長を感じた時、個人のモチベーションは上がります。成長を感じる時とは、仕事の質が向上したり範囲が広がったり、スキルが向上してこれまでできなかった仕事ができるようになる時です。部下を成長させる方法の一つに、現状のスキル以上の仕事を与えてチャレンジさせることです。当然、失敗するリスクがありますが、後述するように上司がカバーすることで部下の成長を促します。上司は、常に部下に成長を感じさせ、モチベーション維持に努めることです。
上司はギリギリまで部下を見守ること
仕事は、責任を持って業務を完遂することが大前提にあります。例えば、部下がやろうとしていることに箸の上げ下げまで口を出すと、部下は自分の仕事と感じられず、責任を持つことが出来なくなってしまいます。成長を促すには、部下自身に目標を決めさせ、ギリギリまで部下の仕事を見守ることです。上司は、心配でどうしようもなくなりますが、どこまで我慢できるかが上司の力量でもあります。
上司は、部下を管理して会社に対して損害となるミスを減らすことが業務の一つです。一方で個人が成長する要因の一つに新しいことにチャレンジすることがありますが、そこにはミスが付きものです。このミスを減らすために部下の成長を促す機会を奪うことは、延いては会社の成長を止めることになります。
ミスには、会社に損害を与える致命的なミスから上司が何とかカバーできるミスなど様々あります。しかし、ミスが多い部下の上司は、自身のその後のキャリアを心配して部下のミスを減らす行動に出ます。そこで、会社としてはそのミスがどのようなミスなのか判断できる体制が必要です。単なるミスなのか前向きなミスなのかを判断し、部下の成長を促すミスであればその上司をきちんと評価しなければなりません。会社として見誤ってはいけないのは、このような上司への処遇です。
よって、上司がギリギリまで部下を見守ることができるようにするには、会社に損害を与えない部下のミスを許容して、損害を与えるミスを事前に摘み取る体制を作ることです。
顧客に対する非公式な仕事(お手伝い等)を認めること
顧客との信頼関係の維持や新規顧客の開拓において、通常のルーティン業務だけでは限界があります。優秀なセールスマンは、非公式な仕事を重要視しています。しかし、非公式な仕事であるため、会社内での報告等はありません。所謂、見えない努力で会社内でも暗黙に容認していることがあります。部下の成長には、この非公式な仕事を上司の責任の範囲で、ある程度を認めることが必要です。なぜ、上司の責任の範囲であるかというと、会社として認めてしまうと公式となってしまい範囲が非常に狭くなってしまうからです。
このような非公式な仕事について、上司は積極的な指導をしてはいけませんが、業務時間外において部下とお酒を飲みながら昔話的に教える方法があります。
個人の責任の範囲を明確にすること
仕事を終えた時の達成感は、責任ある範囲の業務を完遂させた時に感じられます。一方で、責任ある範囲の業務を完遂できなかった場合、他者が残務を消化したりと周りへ迷惑を掛ける場合があります。他者へ迷惑を掛けないように、その範囲の業務だけは完了させようと考えるのが一般的です。しかし、業務の範囲がどこまでなのかが曖昧であると、自身がどの領域まで責任あるのか分からず、責任を持たずに仕事をすることになります。その結果、職務怠慢が発生します。
このように責任の範囲を明確にすることは、部下がきちんと業務を遂行して自身の成長を促すための土台となります。逆に範囲を明確にしないと、他者を頼ったり、責任感を持てなかったりと部下のモチベーションを下げることになります。
顧客が結果を判断する環境を作ること
部下の行った仕事の結果は、上司が判断して評価することが一般的ですが、この仕組みは、部下が上司へ報告する内容を歪曲させたり、また、悪い報告を遅れさせたりする可能性があります。評価事態が歪曲することがあり、上司との人間関係によって適正な評価を受けられない場合もあります。評価に公平性が無ければ、ある部下のモチベーションは高く、ある部下のモチベーションは著しく低くなります。上司は、部下を公平に評価し、部下のモチベーションの総和を高めなければなりません。
本質的に、仕事の結果は顧客が判断するものであり、その内容を元に上司は部下を評価すべきです。その仕組みとしては、部下を帯同させず顧客から部下の働きぶりを定期的に聞くことです。
自分たちの仕事が重要であると認識させること
誇りを持って仕事に従事できることがモチベーションを維持する上で必要です。しかし、誇りを持って仕事に従事している人は多くはありません。どのような仕事であれ需要があって成立しているので、社会にとって必要な仕事は誇りを持つべき仕事です。それなのに、誇りを持てない人がいるのはなぜでしょうか?それは、仕事の本当の価値を認識していないからです。どこにでもある仕事で誰にでもできる仕事だから、そこまで重要な仕事をしているとは思えないという方がほとんどでしょう。そのような根本的な考え方では仕事を重要視できなくなります。
どの会社でも自社の仕事の重要性を何度も社長が説いていますが、社長と立場が大きく異なる従業員にとって社長の言葉は距離感が遠く、社長と同じように考えさせることは不可能です。そこで、上司が自社の仕事の重要性を説かねばなりません。上司の立場は将来の自分となる可能性があるため、上司の言葉の方が現実味があり、受け入れ易いからです。上司が部下と同じ立場の時に、どのような姿勢で仕事に臨んでいたかなどをお酒を飲みながら話すと効果的です。
本テーマでは、高いモチベーション維持について検討・考察しましたが、維持には上記の取り組み以外にも沢山の取り組みが必要です。これらの取り組みは、やればやるほど従業員のモチベーションが上がります。また、これらの取り組みに掛かるコストは小さい上にその効果は大きいため、会社としては優先的に取り組む事項であると考えます。