平成25年12月9日に中小企業庁より公表された「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業の代表者保証に関する問題を整理して、効率的な経営や起業が増えることを期待して策定されました。
本テーマは、ガイドラインにある「解除条件付保証契約」に焦点を当てて、経営にどのような影響を与えるのかについて考察しています。
解除条件付保証契約とは?
解除条件付保証契約とは、主たる債務者が特約条項(コベナンツ)を充足する場合は保証債務(代表者保証)が効力を失う保証契約をいいます。
なお、解除条件付保証契約のコベナンツの内容は、個別案件における当事者間の調整により確定します。
平成26年6月に金融庁より公表された「経営者保証に関するガイドラインの活用に係る参考事例集」に解除条件付保証契約の以下の事例があります。
- 上場申請(IPO)を解除条件(コベナンツ)とする解除条件付保証契約での新規融資が行われた。
事例の解除条件付保証契約付き融資が行われたポイント
①業歴が浅く、直近決算は赤字であるものの、一定の販路を構築済みであり、足元の試算表では黒字に転換しており、今期決算は黒字が見込まれること
②試算表等の定期的な提出があり、情報開示の姿勢が良好であること
③上場を志向しており、主幹事先である証券会社と具体的な協議を進めていること
ポイントはコベナンツ
上記事例におけるコベナンツの「上場申請(IPO)」は、あまり一般的とは言えませんが、上場企業並みの財務状態や信用力を兼ね揃えるなどをコベナンツに設定することは十分に可能であると考えます。
例えば、上場企業における自己資本比率の平均値を達成した場合や上場企業におけるある利益率の平均値を達成した場合などのように代表者保証が外れている上場企業の指標を参考にすることができます。
コベナンツは、当事者間の調整により確定することになっていますので、内容次第で企業成長の意欲を向上させるインセンティブとなります。
なお、現実における代表者保証は牽制機能の役割が大きく、代表者保証を実効する状況(破産)において代表者に資産が残っているケースは稀であります。つまり、代表者に資産が無い場合は保証の牽制機能の効果は小さくなります。
代表者に資産がある内は代表者は代表者保証を外す為に、設定した条件の目標値を達成させるインセンティブが働きます。一方で、当該目標値を金融機関側の査定に重要な指標に設定することで、事業者も当該指標への意識が高まり自ら管理資料を作成するなど、金融機関側のモニタリングコストを下げる効果も期待できます。
以上から、解除条件付保証契約を活用することで企業成長へのインセンティブを持たせることができます。